会社設立を考えている人の中には、手続きに必要な書類はどういったものがあるのか分からない人がいるのではないでしょうか。また、設立手続きで提出する必要書類の順番についても知りたい人はいるでしょう。
株式会社の設立で必要な書類は手続きによって異なります。
当記事では、株式会社の設立手続きの流れに沿って手続きごとの必要書類を解説します。会社設立の準備に向けて必要書類の把握をしたいと考えている人は参考にしてみてください。
会社設立で提出する必要書類は手続きによって異なる
会社設立の際に提出する必要書類は、定款認証や登記申請、設立後の手続きによって異なります。設立の準備から株式会社設立までの期間は、約2週間〜1ヶ月かかるためあらかじめ準備してから手続きを行いましょう。
【設立手続きの流れ 例】
設立手続きの手順 |
概要 |
---|---|
会社設立の準備 |
(1)会社の基本事項の選定 |
定款作成・認証 |
定款を作成して公証役場にて定款の認証を受ける 【定款認証の必要書類一覧】 |
資本金の払い込み |
資本金を発起人の銀行口座に振り込み、通帳をコピーして払込証明書を作成する |
登記書類作成・申請 |
登記申請で提出する必要書類の製本作成後、法務局にて登記申請を行う 【登記申請の必要書類一覧】 |
設立後の手続き |
・法務局にて印鑑証明書を取得 |
会社設立の準備段階で実施すべきこと
会社を設立する準備段階で実施すべきことがあります。会社を設立する手続きを行う前に決めておくべきことや手続きに必要な書類、費用を揃えましょう。
会社の基本事項の選定
法務省が定めたルールに従い商号(会社名)の選定を行うなど定款に記載する会社の基本情報を決めます。定款に記載した事業以外は原則行うことができないことから、事業目的の複数記載は可能なため将来営む予定の事業は記載しておきましょう。
【基本情報一例】
商号(会社名) |
|
事業目的 | 将来営む予定のある事業を記載しておく |
本店所在地 | 定款の場合、最小行政区画までを記載する |
資本金額 | 一定期間売上がなくても安定した経営ができる範囲の金額が望ましい |
発起人 | 会社設立を計画して定款を作成し資本金の出資や会社設立の手続きを行う人 |
役員構成 | 会社形態を問わず取締役は1名必ず設置する必要がある |
会社設立日 | 会社の設立登記を申請した日 |
会計年度 | 会計年度開始日は会社の設立登記をした日であり、その日から1年以内の期間で会計年度を決める |
会社の印鑑(代表者印・角印・銀行印・ゴム印)の作成
設立手続きの準備段階で会社で使用する印鑑を作成しておきましょう。
会社の印鑑は、代表者印・角印・銀行印、必要に応じてゴム印を用意します。
代表者印は法人実印として契約などの場面で必ず必要となります。角印とは、社印とも呼ばれ主に領収書や発注書等といった社内の日常業務に用いられる印鑑です。
また、代表者印や角印以外に法人口座を開設する時に使用する銀行印、本店所在地、社名などの署名を簡易的にしたい場合に使うゴム印と併せて作成しておくことでさまざまな用途で役立ちます。
代表者印などは会社名が確定してから作成する必要がありますが、登記申請時に印鑑登録された代表者印(法人実印)が必要です。登記申請までに準備するようにしましょう。
設立に係る費用の準備
定款認証や登記申請に提出する書類を揃える際に株式会社では約25万円、合同会社は約11万円準備しておきましょう。会社設立の各手続きには、手数料や税金といった費用がかかるからです。
定款認証では、定款認証の手数料が必要であり、振り込んだ資本金の額によって3〜5万円公証役場に支払う額が変動します。認証された定款すべて写した文書の交付手数料「定款謄本代」や定款が書面の場合、印紙税法により4万円分の収入印紙を定款に貼らなければなりません。
会社を登録する際に法務局に納める税金「登録免許税」は、登記申請の必要書類とあわせて収入印紙で提出します。登録免許税は資本金の金額によって変わり、最低でも株式会社は15万円、合同会社では6万円かかります。
各役所の手続きで必要になる「法定費用」のほかに、会社の運転資金である資本金や専門家に依頼する際にかかる報酬費用のことも考えて予算を立て準備しましょう。
会社設立にかかる費用については以下の記事でも紹介しています。
会社設立にかかる費用とは?株式会社と合同会社等持分会社での違いと法人成りでの費用を解説
定款認証で提出する必要書類
定款作成後、公証役場にて必要書類を提出すると公証人による認証が行われます。
法務局にて登記申請を行う際、公証役場で認証を受けた定款が必要になるため、登記申請前に定款認証の手続きを行いましょう。
なお、定款認証は株式会社を設立する場合のみ必要です。合同会社などの持分会社の設立では、定款作成は実施しますが認証は不要です。
【定款認証の必要書類・必要なもの 例】
必要書類・必要なもの | 概要 |
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定款3通 |
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収入印紙 |
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実質的支配者となるべき者の申告書 |
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発起人の印鑑証明書 |
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定款謄本代 |
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定款認証手数料 |
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定款認証のために定款は発起人の実印を押印し3通準備する
定款は、公証役場が保管する1通と会社保存用1通、認証後に法務局にて提出する1通の合計3通を用意しましょう。
書面の定款認証の場合、発起人全員の同意のもとで定める定款には3通すべて発起人全員の個人実印の押印をして提出します。
なお、提出する定款に押印されている実印が発起人のものか確認するために、発起人全員分の3カ月以内に発行された印鑑登録証明書が必要です。
設立した会社の不正利用を防ぐために実質支配者となるべき者の申告書が必要
実質支配者となるべき者の申告書とは、2018年11月30日から導入させた申告制度です。
実質支配者とは、会社を実質的に支配することができる力を持っている個人等を言います。
会社をマネーロンダリングや犯罪行為の資金確保といった不正利用されないように提出が義務付けており、50%超える議決権を保有している人等の反社会的勢力に該当しないことを申告しなければなりません。
犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則11条2項では、以下のよう実質支配者が
定められています。
【株式会社の場合】
① 株式の50%を超える株式を保有する個人
② ①がいない場合:25%を超える株式を保有する個人
③ ①・②がいない場合:事業活動に支配的な影響力を有する個人
④ ①~③がいない場合:代表取締役が該当
資本金の払い込みを証明する書類の準備
登記申請の際に、資本金の払い込みを証明する書類を作成して提出する必要があるため、
登記申請の前に資本金の払い込みを行います。
定款にて定めた資本金の金額を、発起人1人の銀行口座に振り込み、資本金の払い込みを証明する書類に必要な振り込み明細をコピーしましょう。法人名義の口座開設には登記申請が完了した後に交付される「登記簿謄本」が必要になるため、発起人個人の銀行口座に振り込みます。
資本金の払い込みを証明する書類の表紙になる払込証明書には、払込金額の総額や日付、代表取締役の氏名と代表者印の捺印等を記載します。振り込み明細のコピーは、通帳の表紙と通帳の表紙裏、振込内容が記載されているページ3枚が必要です。
なお、資本金の払い込みはインターネットバンキング(ネット銀行)でも可能であり、その場合は金融機関の名前と口座名義人名、口座番号、資本金の振り込み内容が確認できるページをコピーしましょう。会社を設立した後、法人名義の銀行口座を開設して発起人名義の口座に振り込んだ資本金を移行する必要があります。
登記申請で提出する必要書類
法務局で登記申請を行う際に提出する必要書類は、会社の設立する形態によって異なります。「監査役の就任承諾書」など特定の会社のみが必要とする書類もあるため、提出すべき必要書類を把握してから登記申請の準備をしましょう。
【登記申請に必要な書類 例】
必要書類 | 概要 |
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設立登記申請書 |
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収入印紙貼付台紙 |
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定款 |
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発起人の決定書 |
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就任承諾書 |
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印鑑証明書 |
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資本金の払込みを証する証明書 |
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登記事項などを記載した別紙 |
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印鑑届書 |
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設立登記申請書を表紙として書類を製本する
登記申請の必要書類を提出する際は、設立登記申請書を表紙に、書類を順番に重ねて書類左側の2箇所をホチキスで綴じ製本にして、「登記事項などを記載した別紙」と「印鑑届書」は綴じずに申請書類の製本に重ねてクリップで留めます。
製本にした「設立登記申請書」と「登録免許税納付用台紙」の継ぎ目に会社の実印で契印をすることや各書類に個人実印、会社実印を押す等細かく書類について決められているため法務局の公式サイトにある記載例を見てみましょう。
また、「資本金の払込みを証する証明書」は証明書と共に通帳表紙と表紙裏、入出金明細ページのコピー3点をホチキスなどで綴じてから申請書に重ねて製本しなければなりません。「登記事項などを記載した別紙」は、定款に記載されていない内容を補足する書類であり、書面以外にCD-RやDVD-Rといった記録媒体での提出が可能です。
なお、合同会社の場合、登記申請に必要な書類は登記簿謄本に記載される会社の基本事項を記入した書類「登記用紙と同一の用紙」以外、株式会社と提出するものは変わりません。
登記申請の必要書類を提出する方法が知りたい人は、法務局公式サイト「商業・法人登記申請手続 設立」にある記載例を設立予定の会社形態に合わせて確認してみましょう。
会社設立後も必要書類の提出や手続きがある
設立手続きが終わり、会社を設立した後も税務署や自治体、年金事務所等に必要書類の提出や手続きがあります。各機関によって期限や必要書類の内容が異なるため、慌てて手続きにミスが起きないように設立後の手続きを把握しておきましょう。
【設立後の手続き 例】
手続きの場所 |
必要書類・必要なもの |
概要 |
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法務局 |
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金融機関 |
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年金事務所 |
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税務署 |
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都道府県税事務所・市町村役場 |
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労働基準監督署 |
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ハローワーク |
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設立後の手続における注意点
会社を設立後、会社名義の口座を開設する際に印鑑証明書等が必要になるため、法務局にて手続きを行い印鑑証明書を取得しておかなければなりません。社会保険の加入は1人会社であっても必須であり、年金事務所での手続きに必要な書類の提出期限が会社設立から5日以内と短いため早めに手続きを行いましょう。
税務署や自治体では、会社を設立したことを通知する書類「法人設立届出書」に定款、登記事項証明書の写しを添付して提出します。税務署の各必要書類の提出期限は異なるため、別々に提出する場合は提出漏れがないよう注意しましょう。サンプル文章
なお、労働基準監督署やハローワークは従業員を雇用した場合のみ、雇用した日の翌日から10日以内に必要書類を提出しなければなりません。会社設立後の手続きをスムーズに行えるように、各機関の公式HPを確認して計画的に行動しましょう。
まとめ
株式会社を設立する際には、定款認証と登記申請の手続きを行う必要があります。手続きによって、準備する必要書類が異なるためスムーズに設立手続きができるように、あらかじめ提出するものを確認しておきましょう。
定款認証では、登記申請に認証された定款を提出しなければならないため、会社保存用と公証役場に保管するものとあわせて3通の定款を作成して認証を受けましょう。登記申請の書類は設立登記申請書を表紙に必要書類をホチキスで綴じて製本を行うなどの提出の仕方があることから、分からない場合は法務省の公式サイトから登記申請書の記載例の確認または法務局に相談してみましょう。
また、会社を設立した後も手続きはあり、機関によっては提出期限が短く異なる提出書類を揃えなければならないため設立後の手続きについても把握しておきましょう。