法人会社の設立を計画している人の中には、会社設立費用としてどのくらいの予算が必要なのか知りたい人もいますよね。実際にどのような費用がかかり、どのくらいの金額を用意すれば会社を設立することができるのか把握したい人もいるでしょう。
会社の設立に必要な費用は、法定費用と資本金です。「法定費用」は株式会社で約24万円、合同会社で約10万円かかり、加えて設立後の運転資金として「資本金」を用意することで会社を設立することが可能となります。
当記事では、会社を設立するために必要な予算はいくらなのかを解説します。会社の設立に実際に必要な費用とはなにかを理解し、会社の設立計画を進めたいと思っている人は参考にしてみてください。
会社設立に必要な費用は法定費用と資本金
会社の設立に必要な費用は法定費用と資本金です。会社を設立するには会社法で定められた設立手続きを行わなければならず、手続きの際に法定費用と資本金が必要になるからです。
「法定費用」とは、設立手続きを行う行政機関に必ず支払う手数料や税金のことをいいます。法定費用は、設立する法人の種類や資本金額に応じて金額が定められており、定款認証手続きを行う「公証人役場」や法人登記手続きを行う「法務局」に該当費用を支払います。
また、「資本金」は出資者から集められた返済不要な資金のことをいい、会社の財産として事業運営のために使用します。会社法の改定により、最低1円以上の資本金額であれば法人会社の設立が可能となりましたが、開業費用などを考慮して用意する必要があります。
なお、日本政策金融公庫総合研究所が新規開業企業に行った「2022年度新規開業実態調査」によると、開業費用は500万円未満だったという人が4割以上を占めていました。会社の規模や業種にもよりますが、資本金額の目安として約500万円を用意すると会社を設立することが可能と言えるでしょう。
会社設立時の法定費用は株式会社で約24万円、合同会社で約10万円かかる
会社設立時の法定費用は株式会社で約24万円、合同会社で約10万円かかります。株式会社と合同会社で法定費用に差が生じるのは、会社の設立手続きが異なるためです。
【株式会社と合同会社 法定費用の比較】
※発起人=取締役とし1名で会社を設立、資本金額300万円以上の場合費用内訳 | 株式会社 | 持分会社(合同、合名、合資) | |
---|---|---|---|
法定費用 | 定款認証手数料 | 50,000円 | 0円 |
定款謄本手数料 | 2,000円 | 0円 | |
定款印紙代(印紙税) | 40,000円 | 40,000円 | |
登録免許税 | 150,000円 | 150,000円 | |
印鑑代 | 会社実印、法人口座用銀行印、会社角印、発起人実印 | 約20,000円 | 約20,000円 |
印鑑証明書代 | 発起人および取締役の印鑑証明書 | 600円 | 300円 |
合計 | 262,600円 | 120,300円 |
また、株式会社と合同会社では登記申請手続きの際に支払う「登録免許税」の金額に9万円の差があります。そのため、会社設立時に支払う法定費用の合計金額に約14万円の差が生じるため、合同会社を設立するほうが設立費用を抑えることができると言えるでしょう。
なお、法定費用や設立手続きに関する費用は、会社設立後に「創立費」として会社の経費とすることができます。会社設立後の設立費用の経費化について把握しておきたい人は、「会社設立費用を経費にするには?経費対象費用と方法を解説」を参考にしてみてください。
設立手続きを自分で行うと会社設立費用を抑えることができる
会社の設立手続きを自分で行うと設立費用を抑えることができます。設立手続きに必要な書類の作成や申請作業を自分で行うことで、専門家へ依頼する際に必要な報酬料の支払いが不要となるからです。
会社の設立手続きである「定款認証」や「登記申請」を行う際には、会社法で定められた必要書類の作成が義務付けられています。必要書類の作成を自分で行う場合は、書籍や法務省のHPを参考にする方法や、法務局の相談窓口を利用すると無料で作成することが可能です。
必要書類のフォーマットについては、法務局HP「商業・法人登記の申請書様式」からダウンロードができます。法人の種類や設立状況に応じた申請書の入手と記載例についても確認ができるので、会社の設立手続きを自分で行いたい人は利用するとよいでしょう。
なお、会社設立時の必要書類である「定款」を電子データで作成し「電子定款」とした場合、定款に貼付する収入印紙代の40,000円が不要になり、設立費用を抑えることができます。ただし、作成に必要な機器を揃えると印紙代相当となる場合があるので検討が必要です。
専門家へ依頼した場合には10万円前後の報酬料が必要になる
会社の設立手続きを専門家へ依頼した場合には、10万円前後の報酬料が必要になります。設立手続きでの必要書類の作成や、申請作業の代行をしてもらうことに対しての報酬として支払うためです。
会社の設立手続きを司法書士に代行依頼した場合の報酬額について、日本司法書士会連合会がアンケートを行っています。「報酬アンケート結果(2018年度)」によると、資本金500万円の株式会社の設立手続きを全て代行依頼した場合、報酬金の平均相場額は約98,172円~108,525円です。
地域によっての金額の違いや実際に依頼する内容によって金額は変動しますが、専門家へ依頼した場合には10万円前後の代行報酬料が必要と考えられます。そのため、専門家へ依頼し会社を設立すると株式会社は約34万円、合同会社は約10万円の設立費用となります。
なお、専門家へ依頼し会社設立後の顧問契約をすることで代行報酬料が抑えられる場合もあります。会社設立後は、税務や経理事務が煩雑となり専門家への相談や作業依頼をする可能性が高くなるため、設立後のサポート面も考慮して検討しましょう。
資本金の目安は会社設立後の運転資金から考える
会社の設立に必要な資本金の目安は、会社設立後の運転資金から考えます。運転資金が不足すると商品やサービスの販売を継続することができず、経営が悪化し経営破綻をする要因の1つとなり得るからです。
事業の運営は、商品やサービスを販売して売上を上げて利益を出すことですが、業種によっては売上を回収できるまでに期間を要します。売上が回収できるまでに仕入れた商品などの代金を補う資金として「運転資金」が必要となり、会社設立時には資本金から賄います。
会社の運転資金は、経営状況に関係なく支払いが発生する「固定費」と、売上高や生産量に伴って費用が変動する「変動費」の数か月分を目安に考えます。そうすることで、会社設立後すぐに事業が安定しなくても経営を続けることが可能になります。
なお、資本金額を決めるときは、事業を開始できる状態にするための設備や店舗の内装費などの「初期費用」も合わせて考えます。初期費用を考えずに会社を設立した場合、運転資金に回せる資金が減少してしまうおそれもあるため、資本金を考える際には初期費用も含めて検討しましょう。
固定費は経営状況に関係なく支払いが発生する
会社の運転資金である固定費は、経営状況に関係なく支払いが発生します。そのため、売上高が減少した場合でも一定額の費用を継続して支払わなくてはなりません。
【固定費となるもの 一例】
- 税金(法人住民税均等割)
- 税理士報酬費用
- 社会保険料
- 事務所や店舗の地代・家賃
- 水道光熱費
- 通信費
- 広告宣伝費
- 人件費
- 建物、設備、従業員を補償するための保険料
- 減価償却費
固定費である「法人住民税の均等割額」や「社会保険料」などの支払いを怠った場合には、厳しい強制執行を受ける可能性があります。延滞税が課せられ、納付せず督促を無視した場合には財産の差押えなどを受けることになり、社会的信用力の低下に繋がります。
また、株式会社を設立した場合には「固定費となるもの」の費用以外に「決算公示費用」「変更登記費用」「株主総会費用」が必要になります。会社にとって固定費は、経営を圧迫する一因となり得る費用のため、継続して支払えるような予算の計画を立てる必要があります。
なお、会社の設立を計画する際には固定費を抑える方法を模索してみるとよいでしょう。業種によって必要不可欠な基準があるかもしれませんが、オフィスや店舗の家賃や面積は妥当か、省エネな設備にして水道光熱費の削減ができないかなど検討してみてください。
変動費は売上高や生産量に伴って費用が変動する
会社の運転資金である変動費は、売上高や生産量に伴って費用が変動します。そのため、売上高や生産量の増減に応じて掛かる費用も増減します。
【変動費となるもの 一例】
- 原材料の仕入れ費用
- 販売手数料
- 消耗品費
- 接待交際費
たとえば、製造業において製品を製造するための「原材料費」や「部品費」などが変動費にあたります。製品の生産量を先月より500個増やす場合には、先月より500個分の変動費が必要となり、生産量を500個減らす場合には変動費も500個分減らし予算を組みます。
売上や生産量の増減に伴って変動費は変動するため、まずは「売上や生産量の予測」を行い、予測に応じて変動費を算出します。同業種の市場規模を参考にするなどさまざまな方法から売上や生産量の予測を行うことで必要な変動費の把握が可能となるでしょう。
なお、「変動費に該当する費用」を具体的に挙げ原価を把握しておくことで、1カ月あたりに掛かる変動費はどのくらいかをイメージすることもできます。会社設立時の資本金の目安として変動費を算出する際の参考にしてみてください。
まとめ
法人会社の設立に必要な費用は、「法定費用」と「資本金」です。「法定費用」は設立手続きの違いにより差が生じ、株式会社で約24万円、合同会社で約10万円となり、合同会社を設立することで約14万円の法定費用を抑えることができると言えるでしょう。
また、設立手続きを自分で行うことで専門家への代行報酬料が不要となり会社設立費用を抑えることができます。場合によっては、専門家へ依頼することで設立費用を抑え手間を減らすことが可能となるため、設立後のサポート面などを考慮し検討してみてください。
なお、「資本金」は会社設立後の運転資金である「固定費」と「変動費」から考えます。加えて、事業を運営開始する設備費などの「初期費用」も含めた金額を概算し用意することで、資金繰りに困ることのない法人会社の設立が可能になるでしょう。