会社を設立する際、設立手続きは自分で行うかまたは専門家に依頼するやり方があります。設立手続きを検討している人の中で、自分で行う場合の費用や手続きの流れが分からない人はいるのではないでしょうか。
また、専門家に依頼した場合の費用や依頼できる範囲について知りたい人もいるでしょう。
当記事では、会社設立を自分で行う際の費用や流れと専門家に依頼する費用、範囲について解説します。会社設立の手続きをどのように行うか検討している人は参考にしてみてください。
会社設立を自分で行う場合の流れ
会社法や会社設立に関した専門知識がない場合でも、会社設立の手続きを自分で行うことは可能です。インターネットや書籍で設立手続きを調べたり各機関の公式サイトにて公表されている書類の記載例等を確認することができるからです。
なお、会社設立時に必要の書類については、「会社設立で提出する必要書類とは?設立に必要な書類について解説」で詳しく説明しています。
会社設立を自分で行う場合、設立手続きの完了まで約2週間〜3週間の期間がかかるため、設立手続きの流れに沿って計画を立てましょう。設立手続きの流れを把握しておくことで、会社設立の準備から書類作成などの経験が少ない作業にも焦らず対応することが可能です。
STEP1.会社設立の準備
・会社の基本情報の決定
・会社の印鑑を購入
・発起人の印鑑証明書の用意
・資本金の準備
まずは設立準備段階で定款に記載する会社の基本事項、商号(会社名)や資本金の金額、事業目的等の決定を行います。登記申請や会社設立後の手続きに必要になる代表者印(丸印)や角印・銀行印・ゴム印の注文をしておきましょう。
STEP2.公証役場の手続き
・定款を作成・認証
次に、会社の根本規則をまとめた定款を作成して公証役場にて公証人による認証を受けます。
公証役場では、公証人に定款認証に関連する無料相談を行っているため、自分で株式会社設立の手続きをしていて定款で分からないことがある場合は予約をしてから公証役場に相談してみましょう。自分で手続きを行う際には、ネット検索や書籍のほかに日本公証人連合会の公式サイトに、定款認証のQ&Aが記載されているので確認してみてください。
STEP3.法務局の手続き
・資本金の払込
・登記申請書類の作成
・登記申請
定款認証を受けた後、定款に記載した資本金の額を発起人名義の銀行口座に振り込む「資本金の払い込み」を行い、作成した登記申請書類を法務局に提出します。
法務局では、専門知識がなく申請書類の書き方が分からない事業者向けに、1回当たり約20分の利用時間の中で申請書の記載方法や登記申請の手続きに関する相談を無料で実施しています。登記申請の手続きをする前に申請書類の記載内容に誤りはないか書類が不足なく添付されていることなど申請書類の確認もできるため、登記申請で悩みがある人は予約をして法務局に相談してみましょう。
STEP4.会社設立後の手続き
・登記簿謄本と会社の印鑑証明書を取得
・銀行で法人名義の口座を開設
・各機関に届出を提出
会社設立の登記が完了しても設立後には、会社名義の銀行口座の開設や各機関の手続きなどをしなければなりません。会社設立後の手続きに必要になる書類も念頭に置きミスが起きないように準備しましょう。
会社設立後のやることについては「会社設立後にやることを時系列で解説」に詳しく解説しています。設立後にやることを知りたい人は併せてご確認ください。
会社設立の手続きを専門家に依頼できる範囲は限られている
会社設立は自分で行うことも可能ですが、事業を始める準備と会社設立を平行するのはなかなか大変です。
事業開始準備に集中したいという場合には、会社設立の手続きを専門家にお任せすることもできます。
会社設立で必要な業務に対応している専門家は、司法書士、行政書士、税理士、社労士などがありますが、対応できる範囲が専門家によって異なるため、依頼できる範囲について理解しておきましょう。
もし、一括で依頼をしたい場合は、複数の士業が提携してサポートしている事務所などを選ぶと良いでしょう。
【設立手続きを専門家に依頼できる範囲】
司法書士は、司法や法律の専門知識を持ち、会社に関するルールを定めた法律「会社法」を扱う専門家のため、独占業務である登記申請の代行は司法書士のみに依頼が可能です。行政書士は、定款の作成や認証の代行のほか、特定の事業を行う際に必要な行政機関の許可を取得する「許認可手続き」など会社経営に必要な書類の作成や相談を依頼できます。
また、税金に関する専門知識を持つ税の専門家である税理士では、資金調達や節税対策のアドバイスが受けられ、売上予測を行い事業計画書の作成をサポートが可能なため安定した資金繰りで事業を始められます。会社設立後の社会保険・労働関係が専門分野の社労士は、社会保険や労働保険に関する書類作成や人事・労務管理のコンサルティングが行える専門家です。
なお、電子定款のみ専門家に依頼することで定款印紙代はかからず、専門家に支払う報酬費用を抑えることが可能な場合もあります。専門家に依頼したい内容や自分で行える作業の範囲を確認してから専門家に依頼するか検討してみましょう。
会社設立を自分で行う場合と専門家に依頼する際の費用
会社を設立する際の手続きを自分で行う場合と専門家に代行を依頼するやり方があり、費用負担に差があります。専門家に依頼する場合、各役所の手続きに支払う費用「法定費用」と印鑑作成費用、書類の発行費用とあわせて専門家に支払う報酬費用が必要だからです。
【自分で行う場合と専門家に依頼する場合の費用】
費用名 |
費用項目 |
株式会社(自分で行う場合) |
株式会社(専門家に依頼する場合) |
---|---|---|---|
法定費用 |
定款認証手数料 |
資本金の額により変動 |
資本金の額により変動 |
定款収入印紙代 |
4万円(電子定款の場合不要) |
4万円(電子定款に対応している専門家の場合不要) |
|
定款謄本代 |
約2,000円(1ページ250円×ページ数) |
約2,000円(1ページ250円×ページ数) |
|
登録免許税 |
15万円または資本金額×0.007 |
15万円または資本金額×0.007 |
|
その他諸費用 |
会社用の印鑑作成費用 |
約7,000円~8万円前後 |
約7,000円~8万円前後 |
印鑑証明書の発行費用 |
一通450円 |
一通450円 |
|
登記簿謄本の発行費用 |
一通600円 |
一通600円 |
|
専門家報酬費用 |
0円 |
約5~20万円 |
|
資本金 |
運転資金 |
1円~(会社により異なる) |
1円~(会社により異なる) |
合計 |
約25万円~ |
約30万円~ |
株式会社を設立する場合、会社の根本的な規則をまとめた「定款」の正当性を証明するために行う「定款認証」と会社設立の「登記申請」の際に支払う手数料や税金が必須です。設立手続きをするには、株式会社の場合では約25万円がかかり、合同会社は定款認証が不要であり会社を登録する際に納める税金「登録免許税」が最低額6万円のため合計が約11万円と株式会社に比べ設立費用を抑えることができます。
一方、専門家に依頼する場合、設立手続きにかかる費用に加え、約5万〜20万円の報酬費用とあわせて最低でも約30万円の設立費用を準備しなければなりません。ただし、専門家は電子文書(PDF)で作成された定款を用いてオンライン上で申請ができる「電子定款の認証」に対応していることが多い傾向にあるため、収入印紙代はかからない可能性があります。
なお、電子定款の認証を自分で行う場合、電子署名ソフトやICカードリーダライタ等の機器を揃える必要があり、すべて購入すると収入印紙代の4万円よりもかかってしまう場合があります。機材を持っていない人は、書面での定款認証を行うか専門家に電子定款の作成を依頼するか検討してみましょう。
まとめ
会社設立の手続きをすべて自分で行う場合、専門知識がない人にとって、調べることや分からないことが多く時間と労力がかかってしまいます。しかし、設立手続きや会社法に関する専門知識が身に付くほか、専門家に依頼する際に支払う報酬費用がかかりません。
専門知識があまりない場合でも、インターネット検索や書籍のほか各機関が公表している設立手続きの手順や提出書類の記載例などを確認して自分で手続きを行えます。事前に予約を取って公証役場にて公証人に定款認証の相談をすることや法務局に申請書類の相談するなど無料で実施しているため自分で行う場合は検討してみましょう。
また、専門家に代行依頼を検討している人は、設立手続きの作業すべてを依頼するのか電子定款のみ対応して後の手続きを自分で行うなどの依頼する範囲を決めましょう。どのような方法で会社設立手続きを行うか悩んでいる人は、会社設立費用の予算や設立手続き作業に使える時間等を考慮して決めましょう。