個人事業主として順調に売り上げを拡大してきたので法人に移行しようかと考えておられる方は、どのタイミングで法人に移行しようか悩んでいませんか?
個人事業主が新たに法人を設立し事業を法人へ変更することを「法人成り」といいます。
法人成りは、例えば税金も所得税(超過累進課税)から法人税(定率)に変更になる等、それによるメリット、デメリットが発生します。また、変更の為の手続きも手間が掛かります。
ここでは、法人成りのメリットとデメリットについて解説致しますので、法人成りを検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
「法人成り」をするメリットとは?
社会的な信用力が増大する
個人事業主よりも法人の方が、社会通念から対外的な信用が有りますので取引先等の交渉が有利になります。会社によっては、事前に取引先の審査が有ったり、会社組織で無ければ取引しないところも有ります。
売り上げの拡大が見込める
会社組織が取引条件のところが有る為、販路拡大が見込めます。相手の見えないネット通販に出店している場合は、個人より法人の方が一般的に信用されますので、売り上げの拡大が見込めます。
融資が受けやすくなる
銀行融資等を受ける場合、法人の方が社会的に信用が有る為、受けやすくなります。
人材確保がしやすくなる
個人事業主より会社組織の方が社会的信用力が高い為、人材を募集した時も集まりやすく、優秀な人材を採用しやすくなります。
個人の責任範囲が限定される
個人事業の場合、事業の拡大につれて運営リスクも拡大していきますが、法人にすることで、事業の運営リスクを限定することができます。個人事業主の場合、事業破綻・倒産等になった場合、無限の責任を負うこととなっています。株主有限責任の原則で、法人の場合の債務の弁済は、自分が出資した範囲内での責任に限定されます。但し、社長が銀行借り入れ等で自宅、事務所等を担保にしている場合は、会社が倒産した時に個人の自宅等を差し押さえられます。 連帯保証人になっている場合は、借入等は返済しなければなりません。
事業の継承をスムーズに行える
個人事業主が怪我や病気等で働けなくなった場合、取引を中断する取引先も現れます。法人で代表取締役社長が働けなくなった場合、後継者を決め会社が通常通り運営されていれば、取引を中断される可能性が減少します。また、個人事業主が亡くなった場合、相続財産の保護の為に預金口座は凍結され、預金の引き出しが出来なくなります。法人の代表取締役社長が亡なった場合、会社の預金口座は、通常通り使用可能です。
節税の為の方策が多い
例えば以下のような方法があります。
・社長の給与を「給与所得控除額」として経費に出来る
個人事業主が「法人成り」でその会社の代表取締役社長になった場合、会社から給与をもらうことで、その分を利益から差し引いて計算出来ます。その為利益額を低く出来ます。 もちろん社長の給与には所得税、住民税等が掛かります。個人事業主は、事業の所得として所得税(超過累進課税)が掛かります。
・消費税の納付が免除される
会社設立後1年間(1期間)は、会社設立時の資本金が1,000万円未満の場合、免税事業者となり消費税の納付が免除されます。
・「個人事業主の所得税」と「法人税」の税率の差について
この部分が、「法人成り」を行うべきかどうか、一番迷われている部分では無いでしょうか。こちらの経験値ですが、「個人事業でかかる税金」ー「法人でかかる税金」は、下表の様になります。この差額と個人事業主から法人となった時に増加する社会保険、事務負担等の増加分を考慮して、どちらが多く利益が残るかを考えて決定されるのがよいかと思います。課税所得が安定的に又は右肩上がりに上がっている状況で、大体500~600万円になった位が検討の時期かと思われます。
・欠損金を9年間繰越すことができる
法人で青色申告をしている場合は、欠損金を9年間繰越すことができます。個人事業主で青色申告ている場合は、純損失を3年間になります。
・退職金を損金とすることができる
法人の場合、会社から代表取締役社長や家族従業員に対し、退職金の支払いが可能で、それが適正額であれば損金に出来ます。個人事業主の場合、自分で自分に退職金を支払う事になる為、必要経費には計上できません。また、個人事業主が家族従業員に退職金を支払ったとしても、同様に必要経費には計上できません。個人事業主向けには、代わりに「小規模企業共済」制度があり、掛金の全額が所得控除になります。
・会社で契約した生命保険料は、その種類と契約内容によっては全額経費となる。
会社が契約者及び支払者となっている生命保険は、 保険の種類と契約内容によっては保険料が全額経費になるものがあります。個人事業主の場合は、保険料控除できるのは、生命保険料、介護医療保険料と個人年金保険料を合わせて最大12万円までです。
「法人成り」をするデメリットとは?
会社設立時に登記の費用が掛かります
株式会社を設立する場合、登記費用として最低約25万円(電子定款認証を受ける場合には約21万円)かかります。会社設立登記の手続きの代行を司法書士等に依頼すれば、その費用としてプラス数万円かかります。
帳簿作成や税務申告書の作成等、事務処理の負担が増加します
法人の場合、会計処理は会社法に則って処理する必要がある為、税務申告書も所得税の確定申告に比べ複雑になります。それ以外に会計処理及び法人税申告 ・社会保険や労働保険の手続 ・会社組織に関する手続(登記事項の変更など)の事務処理負担が増加します。
交際費の経費算入額が異なります
資本金1億円以下の法人の場合、平成25年4月1日以後に開始する事業年度から、交際費の定額控除額は800万円です。個人事業主は、交際費について、上記のような規定は設けられていません。
赤字でも法人住民税の均等割が有ります
法人の場合たとえ決算が赤字でも、法人住民税均の等割(最低7万円)の税金がかかります。
社会保険への加入が義務づけられています
社会保険、すなわち健康保険と厚生年金保険への加入が義務づけられます。その際、保険料を会社は半分負担しなければなりません。また保険料が、国民健康保険と国民年金に比べて高額になります。保険料は、社員の給与額に応じて決まり、ほぼ比例します。
まとめ:しっかりとデメリットを理解して判断する
いかがでしたでしょうか?法人成りするかどうかの判断は、利益が500万円〜800万円程度出るかどうかというラインが一つの目安ですが、これは業種によっても、専門家でも判断が分かれる所です。
何となく漠然とではなく、明確にメリット・デメリットを把握する。その上で、法人成りの判断をしていただければと思います。「法人成り」をご検討方は、ぜひ参考にしてください。
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