事業の赤字や売り上げの減少に悩んでいる人の中には、経営改善のために使える支援制度を探している人もいますよね。複数の支援制度がある中で、どれを選べばいいのか悩んでいる人もいるでしょう。
経営改善に取り組む際は、国の支援制度を活用できます。経営改善に使える支援制度では、収益や資金繰りなどの改善を図るために、経営改善の計画策定からモニタリングまで国がサポートしてくれます。
当記事では、経営改善に使える国の支援制度を解説します。収益力や資金繰りの改善に取り組みたい人は、自社に合う支援制度を探すときの参考にしてみてください
経営改善支援とは収益や資金繰りを改善できる制度
経営改善支援とは、事業者の収益や資金繰りを改善するために設けられている制度をさします。国が管轄している支援制度には、根本的な経営改善や業績悪化の予防などに活用できる制度があります。
【国の経営改善支援制度】
悩み |
国の制度 |
収益力を改善したい |
収益力改善支援 |
業績悪化を予防したい |
早期経営改善計画策定支援 |
根本的な経営改善を図りたい |
経営改善計画策定支援 |
資金繰りの改善をしたい |
プレ再生支援・再生支援 |
倒産の懸念があり、廃業を検討している |
再チャレンジ支援 |
参考:「中小企業活性化協議会(収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援)」|中小企業庁公式サイト
悩みの種類によって支援が必要となる範囲も異なるため、自社の現状を把握して事業状況にあった制度を選びましょう。
なお、支援制度の中には審査が必要な制度もあります。申請の対象であり支援が必要だと判断された事業者は経営改善のサポートを受けられますが、申請の要件を満たさない場合はサポートを受けられないことに留意しましょう。
収益力改善に向けた支援は収益力改善支援を活用できる
収益力の改善を図りたい人は、収益力改善支援制度を活用できます。経営の悩みを中小企業活性化協議会へ相談することで、収益力改善計画の策定をサポートを受けられます。
【収益力改善支援】
項目 |
内容 |
対象者 |
中小企業者 |
対象の要件 |
・今後6か月間の資金繰りの見通しが認められる場合 ・協議会で収益力の改善を行うことが有用であると判断した場合 |
制度の目的 |
収益力の低下や財務内容の悪化などの恐れのある中小企業の活力の再生を図ること |
具体的な取り組み |
①1年間から3年間の収益力改善計画を作成 (収益力改善アクションプラン+簡易な収支・資金繰り計画) ②収益力改善計画成立後、定期的なモニタリング実施 |
費用 |
収益力改善計画策定にかかる費用は原則無料 |
申請方法 |
各都道府県の中小企業活性化協議会へ相談 |
参考:収益力改善支援「収益力改善支援実施要領」|中小企業庁公式サイト
収益力改善支援を活用する際は、中小企業活性化協議会へ相談をします。収益力の改善が必要だと判断された場合、協議会の相談員が経営者を支援しながら収益力改善計画の作成を進めることになります。
収益力改善計画には、具体的なアクションプランや簡易的な資金繰り計画を記載します。計画策定のサポートにかかる費用は原則無料で、計画実施時も進捗状況を定期的にモニタリングしてもらいアドバイスやサポートを受けられます。
窓口への相談申込書は、中小企業庁公式サイトの「収益力改善支援」からダウンロードできます。収益の低下や資金繰りの悪化に悩んでいる人は、収益力改善支援の活用を検討してみてください。
業績悪化の予防には早期経営改善計画策定支援を活用できる
業績悪化の予防には、早期経営改善計画策定支援を活用できます。対象者は、経営に支障が出る前に収益力低下や資金繰りの悪化などを予防したい中小企業や小規模事業者です。
【早期経営改善計画策定支援】
項目 |
内容 |
対象者 |
中小企業や小規模事業者 |
対象の要件 |
・認定支援機関の支援を受けること ・資金繰り管理や採算管理など基本的な内容の経営改善の取り組みを必要とする者 |
制度の目的 |
経営に支障が出る前に収益力の低下や資金繰りの悪化などを予防したい中小企業・小規模事業者の早期の経営改善・事業再生の取組を促進する |
具体的な取り組み |
①1年間から3年間の早期経営改善計画を作成 (早期経営改善計画アクションプラン+収支・資金繰り計画) ②早期経営改善計画成立後、モニタリング実施 ③早期経営改善計画策定やモニタリングにかかる費用の補助 |
補助上限額 |
・経営改善計画策定にかかる費用:15万円 ・モニタリング費用(期中):5万円 ・モニタリング費用(決算期):5万円 ・金融機関交渉(経営者保証の解除)にかかる費用:10万円 ※金融機関との交渉に弁護士等を活用した場合 |
補助率 |
2/3以内 |
申請方法 |
認定支援機関に相談 |
参考:経営改善計画策定支援事業(早期経営改善計画策定支援)に関する手引き|中小企業庁公式サイト
認定支援機関(認定経営革新等支援機関)は、金融機関や税理士、商工会および商工会議所などの国から認められた中小企業支援の専門家を指します。早期経営改善計画策定支援を活用するには、認定支援機関に登録されている税理士や金融機関に相談する必要があります。
利用申請した後は、認定支援機関とともに早期経営改善計画を策定し、計画を実施後はモニタリングを受けます。計画の策定やモニタリングにかかる費用が最大2/3補助されるため、都度経費の支払い申請書の提出が求められます。
早期経営改善計画策定支援を活用することで、コストを抑えて業績悪化を予防できます。経営に支障が出る前に収益や資金繰りの改善をしたい人は、早期経営改善計画策定支援の活用を検討してみてください。
なお、早期経営改善計画策定支援を活用する際の詳しい流れを知りたい人は「早期経営改善計画とは?利用するための流れを解説」を参考にしてみてください。
金融支援を伴う経営改善には経営改善計画策定支援を活用できる
金融支援を伴う経営改善をしたい人は、経営改善計画策定支援を活用できます。借入金や財務上の問題を抱えている人が経営改善する際に活用する制度であるため、早期経営改善計画策定支援よりも補助される経費の上限金額が高く設定されています。
【経営改善計画策定支援】
項目 |
内容 |
対象者 |
中小企業・小規模事業者 |
対象の要件 |
・認定支援機関の支援を受けること 【通常枠】 経営改善計画策定支援を受けることで金融機関からの支援(条件変更や新規融資等)が見込める中小企業・小規模事業者 【(405事業)中小版GL枠】 「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」に基づき計画策定を行う中小企業・小規模事業者 |
制度の目的 |
金融支援を伴う本格的な経営改善をしたい中小企業・小規模事業者のの経営改善・事業再生・再チャレンジを促進する |
具体的な取り組み |
①1年間から5年間の経営改善計画を作成 (経営改善計画アクションプラン+収支・資金繰り計画) ②経営改善計画成立後、モニタリング実施 ③調査分析および経営改善計画策定やモニタリングにかかる費用の補助 |
補助上限額 |
【通常枠】 ・事業、財務の状況に関する調査分析および経営改善計画策定支援にかかる費用:200万円 ・モニタリング費用:100万円 ・金融機関交渉:100万円 【(405事業)中小版GL枠】 ・事業、財務の状況に関する調査分析および経営改善計画策定支援にかかる費用:200万円 ・モニタリング費用:300万円 ・金融機関交渉:100万円 |
補助率 |
2/3以内 |
申請方法 |
認定支援機関に相談 |
参考:経営改善計画策定支援「経営改善計画策定支援に関する手引き」|中小企業庁公式サイト
経営改善計画策定支援は、通常枠と中小版GL枠とで対象者や補助される経費が異なります。中小版GL枠は、通常枠より規模の大きい取り組みであるため、補助される金額も通常枠と比べ高く設定されています。
補助される経費は、事業や財務状況の調査分析や経営改善計画の作成、モニタリングにかかる費用などが対象です。早期経営改善計画策定支援と同じように、計画の作成後やモニタリング実施後、補助対象経費の支払い申請書を提出する必要があります。
支払い申請をする際は、申請書以外の提出書類も必要です。「業務別請求明細」や「申請者と認定経営革新等支援機関が締結する伴走支援に係る契約書」など、フォーマットが決まっている書類のほか自由書式の書類もあるため、申請の際は「経営改善計画策定支援に関する手引き」を必ず確認しましょう。
資金繰りの改善にはプレ再生支援・再生支援を活用できる
資金繰りの改善には、プレ再生支援・再生支援を活用できます。プレ再生支援・再生支援では、中小企業活性化協議会が金融機関との間に入り、再生計画案の合意に向けたサポートを実施します。
【プレ再生支援・再生支援】
項目 |
内容 |
対象者 |
要件を満たした再生計画を作成する中小企業者や小規模事業者 |
対象の要件 |
【中小企業者】 ・事業年度開始の日から5年以内を目処に実質的な債務超過を解消 ・経常利益が赤字の場合、事業年度開始の日から概ね3年以内を目処に黒字に転換 ・再生計画の終了年度の有利子負債の対キャッシュフロー比率を概ね10倍以下にする 【小規模事業者】 ・再生計画成立後2事業年度目から3事業年度継続して営業キャッシュフローをプラスにする ・事業継続を行うことが、相談企業の経営者等の生活の確保において有益であること |
制度の目的 |
収益性はあるものの、財務上の問題がある中小企業を対象に、事業面・財務面での改善を図る再生支援を実施する |
具体的な取り組み |
①再生計画案の作成を支援 ②定期的なモニタリング |
費用 |
再生計画策定にかかる費用の一部を補助 |
申請方法 |
各都道府県の中小企業活性化協議会へ相談 |
参考:プレ再生支援・再生支援「中小企業活性化協議会実施基本要領 別冊2」|中小企業庁公式サイト
プレ再生支援・再生支援は、収益性のある事業はあるものの財務上の問題を抱えている起業を対象としています。作成する再生計画は、対象者ごとの要件を満たしていなければ支援を受けられません。
プレ再生支援・再生支援を活用することで、債務の返済額をキャッシュフローに合わせて適正化した、収益重視の再生計画を立案できます。資金繰りの改善をしたい人は、プレ再生支援・再生支援の活用を検討してみてください。
倒産の懸念や廃業の検討は再チャレンジ支援を活用できる
倒産の懸念がある事業者や廃業を検討している事業者は、再チャレンジ支援を活用できます。再チャレンジ支援は、企業や保証人が円滑な廃業や経営者および保証人の再スタートするために、アドバイスや弁護士の紹介を受けられる制度です。
【再チャレンジ支援】
項目 |
内容 |
対象者 |
収益力の改善や事業再生等が極めて困難な中小企業や、保証債務に悩む経営者・保証人等 |
対象の要件 |
以下のどちらかにあてはまること ・中小企業者の収益力の改善や事業再生等が極めて困難であること ・代表者及び保証人の保証債務のみの整理を行う必要があること |
制度の目的 |
地域の資産である中小企業者の経営者や従業員等が再チャレンジできる環境を構築し、中小企業の活力の再生を図る |
具体的な取り組み |
①円滑な廃業に向けた助言等 ②中小企業版ガイドラインなどの廃業型の私的整理手続へのサポート支援 ③経営者等の再スタート(個人保証債務の整理)に向けた助言等及び支援 |
費用 |
協議会による支援は無料 ※外部の専門家へ依頼する場合は費用負担が必要 |
申請方法 |
各都道府県の中小企業活性化協議会へ相談 |
参考:再チャレンジ支援「中小企業活性化協議会 実施基本要領」|中小企業庁公式サイト
再チャレンジ支援が必要だと判断された場合、専門家のサポートを受けながら廃業の手続きや個人保証債務の整理を進めることができます。その際、協議会に所属する弁護士などの専門家の支援を受けられますが、必要に応じて外部の専門家に依頼する場合もあります。
再チャレンジ支援において、事業再生にかかわる相談は無料です。外部の専門家を頼る場合は費用負担が生じますが、再チャレンジ支援を活用することによりコストを抑えて専門家へ廃業や個人保証債務の整理に関する相談ができます。
国の制度以外には専門家の支援を活用できる
経営改善をする際は、国の制度以外にも専門家の支援を活用できます。国の制度以外で士経営改善の支援を探している人は、税理士や金融機関などが独自で実施しているサービスを活用しましょう。
【専門家による支援内容の具体例】
- 税理士や会計士による相談およびアドバイス
- 金融機関の経営改善支援
- 中小企業診断士のコンサルティング
経営改善に関するサポートを実施している機関は複数あり、依頼先によってサポート内容もさまざまです。経営改善に悩んでいる人は、顧問税理士や懇意にしている金融機関に経営改善のサポートサービスを実施しているか確認してみましょう。
まとめ
経営改善をする際は、国の支援制度を活用できます。国が管轄している支援制度には、根本的な経営改善や業績悪化の予防などに活用できる制度があります。支援制度を活用する際は、自身が申請の対象であるかを各支援制度の基本要綱や手引きを見て確認しましょう。
また、国の支援制度以外で経営改善の支援が欲しい人は、税理士や金融機関などの専門家が独自で行っている経営改善のサポートサービスを活用しましょう。まずは、顧問税理士や懇意にしている金融機関に相談してみてください。