3社間ファクタリングとは？特徴や注意点を解説

3社間ファクタリングとは売掛先の関与がある契約形態のこと

3社間ファクタリングとは、売掛先の関与があるファクタリングの契約形態のことをいいます。売掛債権の売買（譲渡）契約に対して売掛債権の債務者である売掛先の同意が必要となることから、売掛先が契約手続きに関与する仕組みとなっています。

3社間ファクタリングは売掛先が契約手続きに関与することから、契約が成立するまでの流れが2社間ファクタリングとは異なります。3社間ファクタリングで契約をした場合の具体的なイメージを捉えるためにも、3社間ファクタリングの流れを押さえておきましょう。

3社間ファクタリングの流れ

3社間ファクタリングの流れは、以下の通りです。

＜3社間ファクタリングの流れ＞

3社間ファクタリングの契約手続きは「利用申込と買取審査」「売掛先への債権譲渡通知」「契約締結」です。3社間ファクタリングの利用を検討している人は、それぞれの手続きの内容を押さえておきましょう。

なお、契約手続きの順序はファクタリング会社によって異なる場合があります。実際に利用する際の流れに関しては、ファクタリング会社の公式サイトや事前相談窓口などから確認をしてみてください。

利用申込を行い買取審査を受ける

まず、ファクタリング会社へ3社間ファクタリングでの利用申込を行い、売掛債権の買取可否を決定する買取審査を受けます。審査基準や審査方法はファクタリング会社によって異なるものの、利用申込時に提出をする必要書類をもとに審査が行われます。

ファクタリングの買取審査ではおもに、売掛債権の信用度や売掛先の信用状況などが重要視されます。買取審査によって売掛債権の買取可否と、3社間ファクタリング契約時の手数料が決定します。

売掛先への債権譲渡通知を実施する

審査において買取可能と判断された後は、売掛先への債権譲渡通知を実施します。3社間ファクタリングは売掛先を含めた3社の合意によって成立する契約であるため、債権譲渡通知を実施して売掛先に債権譲渡に対する承諾と契約への合意を得ます。

債権譲渡通知とは、債権譲渡の事実を債務者に知らせる行為のことです。債権譲渡通知の実施によって、ファクタリング会社に売掛債権を譲渡したことや債務の支払い先がファクタリング会社に変わることが売掛先に周知されます。

3社で売買（譲渡）契約を締結する

債権譲渡通知にて売掛先から債権譲渡に対する承諾と契約への合意を得ることができたら、3社間による売掛債権の売買（譲渡）契約を締結します。3社による契約への合意が成立すると、ファクタリング会社から利用者に対して売掛債権の買取代金が支払われます。

なお、債権譲渡通知を受けた売掛先は、債務の支払先をファクタリング会社へと変更します。売掛債権の支払いは売掛先からファクタリング会社へと直接行われることになるため、利用者への支払いはなくなる点に留意しておきましょう。

3社間ファクタリングの特徴

3社間ファクタリングは売掛先が契約手続きに関与するため、以下のような特徴があります。

＜3社間ファクタリングの特徴＞

• 手数料を抑えられる
• 売掛債権の回収業務が不要になる
• 個人事業主が利用しやすい

3社間ファクタリングの特徴を把握することで、もうひとつの契約形態である2社間ファクタリングと比較検討がしやすくなります。ファクタリングの利用を検討している人は、3社間ファクタリングの特徴を押さえておきましょう。

手数料を抑えられる

3社間ファクタリングの特徴として、手数料を抑えられることが挙げられます。3社間ファクタリングは売掛先の関与によって、売掛債権の未回収リスクを軽減できる契約形態であるためです。

ファクタリングの手数料には、未回収リスクに対する損失補填が考慮されています。未回収リスクが低い売掛債権は補填の必要性が低いため、ファクタリング会社は手数料を低めに設定する傾向にあります。

3社間ファクタリングは売掛先への債権譲渡通知により債権の実在性を確認できるため、架空債権の買い取りや二重譲渡などの未回収リスクは低くなります。未回収リスクの低減により低い手数料設定となるため、利用者は手数料を抑えることが可能です。

売掛債権の回収業務が不要になる

3社間ファクタリングの特徴として、売掛債権の回収業務が不要になることが挙げられます。売掛先の関与によって、売掛債権の回収をファクタリング会社が直接行えるようになるためです。

売掛先が契約に関与しない場合、利用者は売掛債権を回収しファクタリング会社へ送金する回収業務を担います。万が一売掛債権の支払いが遅延したときは、売掛先への督促やファクタリング会社への状況説明を利用者が行うため、事業の負担となる可能性があります。

3社間ファクタリングは売掛先が契約に関与していることから、ファクタリング会社が売掛債権の回収業務を行います。売掛債権の支払いが遅延した場合もファクタリング会社が直接売掛先へ督促を行うため、利用者は回収業務の負担なくファクタリングを利用できます。

個人事業主が利用しやすい

3社間ファクタリングの特徴として、個人事業主が利用しやすいことが挙げられます。3社間ファクタリングでは、2社間ファクタリングの利用時に実施を求められることがある「債権譲渡登記」という手続きが発生しないためです。

2社間ファクタリングにおける債権譲渡登記は、ファクタリング会社が売掛債権の未回収リスクを軽減するために実施します。債権譲渡登記は法人のみが行える手続きであるため、債権譲渡登記を求められた場合、個人事業主は2社間ファクタリングを利用できません。

3社間ファクタリングの場合、債権譲渡通知の実施によって売掛債権の未回収リスクを軽減できることから、債権譲渡登記の手続きが不要です。債権譲渡登記を実施できないことを理由に利用を断られることがないため、3社間ファクタリングは個人事業主が利用しやすい契約形態と言えます。

なお、個人事業主のファクタリングの利用には、一定の条件が設けられている場合があります。個人事業主としての利用を検討している人は、利用申込の前にどのような条件が設けられているかを押さえておくことで効率的に資金調達をすることが可能になります。

個人事業主が押さえておくべきファクタリングの利用条件は「ファクタリングは個人事業主も利用できる！押さえておくべき条件を解説」で紹介しているため、参考にしてみてください。

3社間ファクタリングを利用する際の注意点

3社間ファクタリングを利用する際には、以下の点に注意をする必要があります。

＜3社間ファクタリングの注意点＞

• 売掛先の理解が必要になる
• 原則として即日での資金化はできない

3社間ファクタリングの注意点を踏まえることで、3社間ファクタリングが自社に適した契約形態であるかを判断することが可能になります。ファクタリングの利用を検討している人は、3社間ファクタリングの注意点を押さえておきましょう。

売掛先の理解が必要になる

3社間ファクタリングの注意点のひとつに、売掛先の理解が必要になることが挙げられます。3社間ファクタリングは、債権の譲渡やファクタリングの利用に対する同意を売掛先から得られなければ利用できないためです。

たとえば、売掛先から理解を得ずに債権譲渡通知を実施した場合、売掛先は知らない間に売掛債権が譲渡されていることに不信感を抱き契約に同意をしない可能性があります。3社間ファクタリングは売掛先からの契約への合意が必須であるため、契約は不成立となります。

したがって、3社間ファクタリングの利用には売掛先の理解が必要です。3社間ファクタリングを利用する際には、売掛先に対して利用へ至った経緯の説明や債務先の変更願いなどの事前の配慮が必要になることに留意しておきましょう。

原則として即日での資金化はできない

3社間ファクタリングの注意点のひとつに、原則として即日での資金化はできないことが挙げられます。3社間ファクタリングは債権譲渡通知の実施と売掛先からの契約への同意を得る必要があることから、契約手続きが長引く傾向にあるためです。

売掛先への債権譲渡通知は内容証明郵便で行う必要があるため、契約手続きの過程に郵便物の郵送期間が発生します。また、売掛先から契約に対する返答を待つ期間が発生することから、3社間ファクタリングは契約締結に至るまでに1週間ほどかかる場合があります。

したがって、3社間ファクタリングは原則として即日での資金化はできません。1日でも早い資金化を希望する場合には、最短即日での資金化が可能である2社間ファクタリングの利用を検討してみてください。

まとめ

3社間ファクタリングは、ファクタリング会社と利用者、売掛先の3社で売掛債権の売買（譲渡）契約を締結する契約形態のことです。売掛先から債権譲渡に対する承諾と契約への合意を得る必要があるため、契約手続きにおいて債権譲渡通知を実施します。

3社間ファクタリングの特徴として「手数料を抑えられること」「売掛債権の回収業務が不要になること」「個人事業主も利用しやすいこと」が挙げられます。手数料を抑えたい人や回収業務の負担を回避したい人などは、3社間ファクタリングの利用を検討してみてください。

しかし、3社間ファクタリングには「売掛先の理解が必要になる」「原則として即日での資金化はできない」という注意点があります。3社間ファクタリングの利用は、売掛先への配慮の必要性や資金調達にかかる期間が長引くことを踏まえた上で判断しましょう。