国内で事業を行う法人は、会社の規模に関わらず事業年度ごとの決算書を作成し開示する義務があります。事業年度内でファクタリングを利用した場合は、決算期に作成する決算書にも反映させる必要があります。
当記事では、ファクタリングが決算書に与える変化を解説します。ファクタリングをした後の決算書が今後の資金調達に与える影響についても紹介しているので、影響力を把握した上で利用を検討したいという人は参考にしてみてください。
ファクタリングの利用による決算書の変化
決算書は貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書によって構成されている企業の財務状況や業績を示す文書です。
ファクタリングを利用した場合、貸借対照表と損益計算書に取引内容が反映されます。
売掛金の売却よって貸借対照表では資産と利益に変化が生じる
ファクタリングは、資産として保有している売掛金の現金化を行う取引であるため、貸借対照表の資産に変化が生じます。
たとえば、売掛金800万円をファクタリング手数料10%で売却した場合は、利用前に資産の部に計上された売掛金800万円が無くなり、売却によって得た資金を現金にプラスして計上します。さらに、純資産の部にファクタリング利用時の手数料を繰越利益余剰金として計上します。
ファクタリング利用前の貸借対照表は、図のように資産の部に売掛金が計上されます。
一方で、ファクタリング利用後の貸借対照表では、資産から売掛金の計上がなくなります。そして、ファクタリングによって得た資金が現金にプラスされます。
また、ファクタリングによる資金化には手数料の支払いが伴います。ファクタリング手数料会社の繰越利益剰余金が減少します。
なお、ファクタリング取引を決算書に反映させるためには、ファクタリング利用時の仕訳を正しく行う必要があります。決算書の元となる仕訳帳への記帳方法については「ファクタリング利用時の仕訳方法を解説」を参考にしてください。
手数料が営業外費用に計上されることで損益計算書に変化が生じる
ファクタリグは利用時に手数料が発生します。損益計算書の営業外費用にファクタリング利用時の手数料を計上します。
<損益計算書におけるファクタリング手数料の計上例>
営業外費用は会社の主たる営業活動以外で発生した損失を計上します。ファクタリング利用による手数料は、主たる営業活動で発生した損失ではないことから、営業外費用に計上されます。
営業外費用には、ファクタリング利用手数料の他、借入金返済時に発生する支払い利息や手形の資金化を行う際に発生する割引料などが該当します。
ファクタリング利用後の決算書が資金調達に与える影響について
決算書は金融機関から融資を受ける際の審査に必要な書類の一つです。ファクタリングを継続的に多用した場合、融資審査において影響を与える可能性があります。
ファクタリングを継続的に多用することで、営業外費用の負担が大きくなります。営業外費用の負担が大きくなると、経常利益が減少します。経常利益が減少すると当期純利益にも影響を与えることになります。
当期純利益に影響がでると、会社の財務状況や業績を評価する財務指標のひとつである総資産利益率(ROA)を低下させる可能性があります。
総資産利益率(ROA)が低くなると「効率的な運用ができていない」「収益性が低い」という企業評価を受け、審査評価に大きな影響を与える可能性があります。
金融機関は、滞りなく返済ができるかどうかなどを決算書から確認しているため、ファクタリングを多用した結果、総資産利益率が低下すると融資審査が通らない可能性も考えられます。
ファクタリングを利用する場合は、適切な頻度にとどめておくようにしましょう。
まとめ
ファクタリングは、決算書の貸借対照表や損益計算書に変化を与えます。
貸借対照表では売掛金の売却とファクタリング手数料によって資産と利益に変化を与え、損益計算書では営業外費用としてファクタリング手数料を計上します。
ファクタリングを継続的に多用すると、総資産利益率が低くなる可能性があり、融資など決算書が審査や評価のひとつとして利用されるケースでは影響を与える可能性が高くなります。
ファクタリングの利用は適切な範囲にとどめておくことが大切です。
なお、ファクタリングを利用する際には手数料の負担を抑えられるかどうかを確認するようにしましょう。手数料は経常利益に影響を与えるため、手数料負担が抑えられることが大切です。利用時には複数社を比較し、手数料などをしっかりと確認しておきましょう。