資金調達の手段は、金融機関からお金を借りる「融資」ばかりではありません。
国や自治体は、新しいアイデアや技術を持つ企業が増えること、それによって雇用が生まれ、経済活動が活発になることを常に望んでいます。
そのための助成金や補助金が、毎年用意されています。
今回は、助成金、補助金についてお話します。
「融資」と「助成金」「補助金」の違いとは
融資との最大の違いは、原則として返済不要であることです。
返済義務がある融資は「借りたお金」ですが、助成金や補助金は「もらえるお金」です。
数十万、数百万円のお金をもらって返さなくてもいいなんて……と、不安になる人もいるかもしれませんが、その財源は私たちが納めている税金です。
特に助成金の財源は雇用保険料の一部であり、起業すれば必ず雇用保険料を納めることになるので、助成金や補助金を受け取ることは、納税者や事業主が元々有している正当な権利と言えます。
安心して受け取りましょう。
とはいえ、助成金や補助金は必ずもらえるものではありません。
まず、財源が税金であるため、申請期間や使用用途に制限があります。
申請期間が過ぎてしまえば当然もらえません。
また、各助成金・補助金には「○○を行うために交付する」という具体的な目的があり、その目的に合致しなければ受給はできません。
政策方針によって毎年内容が変わるため「今年は準備が間に合わなくて申請できなかったから、来年は必ず申し込もう」と思っても、来年も同じ助成金があるとは限りません。
さらに注意すべきは、助成金も補助金も、原則として「後払い」であるということです。
申請をして交付が認められたとしても、すぐに入金されるわけではありません。
対象となる事業を実施したり制度を導入したりして、その実績報告を行った後に、ようやく交付されるのです。
「助成金」、「補助金」の違い
では、それぞれの管轄と目的を見ていきましょう。
【助成金】
厚生労働省と経済産業省、および地方自治体が実施している、返済不要の交付金です。
厚生労働省の助成金は主に雇用関係であり、従業員の新規雇用や教育、障害者や高齢者の雇用、残業の削減、有休や育児休業の充実など、雇用の安定と労働環境の改善を目的として50種類前後が用意されています。
助成額は数十万〜数百万円程度ですが、受給条件に該当し、申請をすれば高い確率で受給が決定されるため、多くの事業主が注目しています。
従業員を雇用する予定の起業家は、この制度について事前に調査しておくことをお勧めします。
助成金を少しでも知っている、調べたことがある人なら、助成金=厚生労働省管轄の雇用関係助成金というイメージがあるでしょう。
一方、別な考え方になりますが、経済産業省管轄の補助金もあります。
経済産業省管轄の補助金は、新しい製品、技術、サービスなどを開発するための研究費に加え、今までにないビジネスモデルを事業化するための広告宣伝費やコンサルティング費用などにも適用されます。
最大5,000万円という多額の受給額が用意されていますが、書類審査と面接に合格する必要があり、雇用関係の助成金と比べてやり方が異なる制度と言えます。
地方自治体が実施している助成金制度は、地域内の産業振興等を目的に、それぞれ独自の内容で実施しています。
例
◎東京都の助成金対象事業
・海外展開技術支援助成事業
・先進的防災技術実用化支援事業
・正規雇用等転換促進助成事業
・若者応援宣言企業採用奨励金 など
◎愛知県の助成金
・あいち中小企業応援ファンド助成事業
・女性の活躍促進奨励金 など
◎大阪府の助成金
・地域福祉振興助成金 など
申請資格は、主にその都道府県または市区町村に事務所を持つ中小企業者や個人事業者、創業予定者であることが多いため、起業を考えている人はその地域で実施している助成金制度について確認しておきましょう。
【補助金】
経済産業省や地方自治体が実施している、返済不要の交付金です。
起業やものづくりの促進、地域活性化、中小企業支援などを目的としており、経済産業省と地方自治体の補助金制度の数を合わせると、その数は3,000種類以上あるともいわれています。
助成金との違いは、審査の合格率(採択率)です。
助成金は要件を満たしていればほぼ交付が決定されますが、補助金はその申請内容が制度の趣旨に合致しているか厳しく審査され、採択されないこともあります。
また、補助金制度の多くは国が認定した「経営革新等支援機関」のサポートを受けることが要件に含まれています。
経営革新等支援機関は一定の専門知識や実務経験を持つ者に対して国が認定する公的な支援機関の資格であり、中小企業や小規模事業者の経営相談等を担っています。
補助金の申請から、事業計画等の策定、実行支援、進捗状況の管理など、より確実に補助金の交付が受けられるようにフォローしてくれる存在です。
ただし地方自治体の補助金は国に比べて予算が少ないため、採択される件数も多くはありません。
また募集期間も短く、競争率が激しくなるため、「狭き門」になることもあります。